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仙台地方裁判所 昭和62年(わ)546号 判決 1988年3月08日

国籍

韓国

住居

宮城県加美郡中新田町字矢越二一七番地

無職

木村誠志こと

金培振

一九二九年(昭和四年)一月二日生

右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官向井壯出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一年六月及び罰金四〇〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、宮城県栗原郡栗駒町岩ヶ崎六日町六〇番地等において、パチンコ店七店舗を経営していたものであるが、妻木村光江こと姜花淑と共謀のうえ、自己の所得税を免れようと企て、収支に関する記帳を行わず、各パチンコ店の営業収入の一部を仮名の預金として留保するなどの不正行為により所得を秘匿したうえ、

第一  昭和五七年の実際総所得金額は六七五七万七五一六円、これに対する正規の所得税額は三五三四万七一〇〇円であったのに、昭和五八年三月四日、同郡築館町伊豆三丁目一番一〇号の築館税務署において、同税務署長に対し、昭和五七年分の所得金額が一四八〇万〇〇〇〇円で、これに対する所得税額が四二一万九五〇〇円である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同年分の正規の所得税額と右申告税額との差額三一一二万七六〇〇円を免れ

第二  昭和五八年分の実際総所得金額は一億二四八八万三二五八円、これに対する正規の所得税額は七七八〇万一九〇〇円であったのに、昭和五九年三月一四日、前記築館税務署において、同税務署長に対し、昭和五八年の所得金額が一五八〇万〇〇〇〇円で、これに対する所得税額が四六六万五七〇〇円である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同年分の正規の所得税額と右申告税額との差額七三一三万六二〇〇円を免れ

第三  昭和五九年分の実際総所得金額は一億二一三八万八二七九円、これに対する正規の所得税額は七一二八万一六〇〇円であったのに、昭和六〇年三月一一日前記築館税務署において、同税務署長に対し、昭和五九年分の所得金額が一八五〇万〇〇〇〇円で、これに対する所得税額が五八五万八五〇〇円である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同年分の正規の所得税額と右申告税額との差額六五四二万三一〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

全事実につき

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する供述調書二通

一  被告人の大蔵事務官に対する質問てん末書

一  木村光江こと姜花淑、木村俊成こと金俊成、木村信成こと金信成、佐藤昌彦、佐久田昭彦及び大山元久こと姜元久の検察官に対する各供述調書

一  松山花子こと姜花子の大蔵事務官に対する質問てん末書

一  大蔵事務官作成の告発書

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書説明資料

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書三通

一  大蔵事務官作成の申告税額調査書

一  大蔵事務官作成の現金調査書

一  大蔵事務官作成の預貯金等調査書

一  大蔵事務官作成のたな卸資産等調査書

一  大蔵事務官作成の前払金調査書

一  大蔵事務官作成の貸付金調査書

一  大蔵事務官作成の建物等調査書

一  大蔵事務官作成の車両等調査書

一  大蔵事務官作成の土地調査書

一  大蔵事務官作成の敷金調査書

一  大蔵事務官作成の出資金調査書

一  大蔵事務官作成の事業主勘定調査書

一  大蔵事務官作成の買掛金調査書

一  大蔵事務官作成の未払金調査書

一  大蔵事務官作成の借入金等調査書

一  大蔵事務官作成の元入金調査書

一  大蔵事務官作成の事業専従者控除額調査書

一  大蔵事務官作成の利子所得調査書

一  大蔵事務官作成の不動産所得調査書

一  大蔵事務官作成の譲渡所得調査書

一  大蔵事務官作成の雑所得調査書

(法令の適用)

被告人の判示第一ないし第三の各行為は、いずれも刑法六〇条、所得税法二三八条一項に該当するが、いずれも懲役刑と罰金刑とを併科することとし、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法四七条本文、一〇条によりもっとも犯情の重い判示第二の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で、罰金刑についてはいずれも所得税法二三八条二項、刑法四八条二項を適用して各免れた所得税の額を合算した金額の範囲内で、被告人を懲役一年六月及び罰金四〇〇〇万円に処し、右罰金を完納することができないときは同法一八条により金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとし、懲役刑については同法二五条一項によりこの裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予することとし、主文のとおり判決する。

(裁判官 渡邊達夫)

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